
第1問
第1段落
・「いかなる…のか」:疑問を呈する形になっているのでここが文章のテーマであることがわかります。
この文のテーマは「娯楽の対象としての妖怪が生まれた歴史的背景」です。
第2段落
・「確かに+譲歩+しかし+主張」の形はよく用いられる表現です。
・「つまり」は言い換え表現であり、直後に段落の要点や本文全体の要点がくることが多い表現です。
内容:妖怪は歴史性を帯びている。
第3段落
・「~を超えた」:対比構造を示します。
ここでは、「日常(的理解に基づく現象)⇔非日常(的で不可思議な現象)」と考えます。
・「つねに+一般論+ところが+主張」の形もよく用いられます。
・「~とは」:用語の意味を定義する表現です。本文全体を理解するために重要となる語句の意味が定義されることが多いです。
・「そうした存在」⇒指示語は具体化しましょう。(これが問2のカギですね。)
内容:妖怪とは、日常的理解を超えた不可思議な現象に秩序ある意味を与える存在である。
第4段落
・「意味論的な危機」「リアリティ」:第3段落の表現が反復されています。反復される表現は重要なので、注目しましょう。
・「フィクション」:これも反復ですね。第1段落の反復です。
・「~することが必要」:必要性を訴える=筆者の主張である。
・「変容する」:変容するbeforeとafterで対比構造を形成します。 リアリティ⇔フィクション
内容:リアリティを帯びた存在である妖怪がフィクションとしての存在になるには何らかの変化が必要である。
第5段落
・「どのように…のか」「いかなる…のか」:問いかけなのでこの文章のテーマです。第1段落の内容が反復されています。
・「具体的な事例」:文字通り具体例が示される表現ですしかし、今回私たちに与えられた範囲では具体例は提示されていません。(このことが設問にも反映されています。)
内容:どのような歴史的背景で妖怪に対する認識がリアリティからフィクションへ変化したのかを確認するのが本書のテーマである。
第6段落
・「ミシェル・フーコー」:他人の考えを引用するのは、筆者が自分の主張に説得力を与えることが目的として行われることがほとんどです。
内容:フーコーの「アルケオロジー」の手法を使って話を進める。
第7段落
・「関係性」:第8段落で反復される語である。
・「秩序」:第3段落の反復である。
・「変容する」「認識」:第4段落・第5段落の反復である。
・「変貌」:「変容」の言い換えである。
内容:事物の関係性や秩序が時代とともに変容する歴史を描くのが「アルケオロジー」である。
第8段落
・「関係性」:第7段落の反復。
・「物」「言葉」「記号」「人間」「再編成」:第9段落で反復される。
・「認識」:各段落で反復されている。
内容:「物」「言葉」「記号」「人間」の関係を再編成することで認識のあり方が変わる。
第9段落
・「物」「言葉」「記号」「人間」の布置の再編成:第8段落の反復。
・「変容」:第4・第6・第7・第8段落の反復である。
・「変動」:「変容」「変貌」の言い換え表現である。
内容:「物」「言葉」「記号」「人間」の布置の再編成により妖怪観がリアリティからフィクションに変化することを本書では記述する。
第10段落
内容:これより、日本の妖怪観の変容について簡単に述べる。
第11段落
・「中世」:第2段落・第12段落の「近世」と対比される。
・「記号」:この段落で5回登場⇒段落内の最重要キーワードであると判断する。
内容:中世、妖怪は「記号」であった。
第12段落
・「しかし」:逆接⇒対比構造を示す。
「中世」(妖怪は記号)⇔「近世」(博物学的な思考・嗜好の対象となった)
内容:中世では「記号」であった妖怪が、近世では思考・嗜好の対象となった。
第13段落
・「しかし」:逆接⇒対比構造を示す。
かつて(人間は所与の「記号」を読み取るだけ)⇔近世(人間が「記号」をコントロールする)
・「支配」「コントロール」:言い換え表現である。
・「表象」:段落内・第14段落で反復されている。
内容:近世において、人は記号を支配しコントロールすることができるようになった。これを「表象」という。
第14段落
・「むしろ」:対比構造を示す。 「意味を伝える」⇔「形象性、視覚的側面が重要」
・「作り変える」:対比構造を示す。
・かつて(中世)「リアリティ」
⇔いまや(近世)「リアリティを喪失」「フィクショナルな存在として人間の娯楽の題材へと変化」
内容:記号が「表象」になり、視覚的な側面が重要となってリアリティを喪失し、妖怪が娯楽の題材に変化した。
第15段落
・「近世後期」(妖怪は娯楽の題材・フィクショナルな存在)⇔「近代」(妖怪がリアリティを取り戻す)
・「一般的な認識とはまったく逆」:大学受験の評論文では、一般的な認識とは逆の内容が述べられることが多いです。
内容:近世後期にリアリティを喪失して娯楽の題材となった妖怪は、近代にはリアリティを取り戻す。
第16段落
・(近世後期)「人間の力は絶対」⇔(近代)「人間そのものに懐疑が突きつけられる」「不安定」「コントロール不可能な部分がある」
・「かつて」「フィクショナルな領域」⇔「今度」「人間の内部」
内容:近世後期に娯楽の題材となった妖怪は、近代には人間の不安定な部分やコントロール不可能な部分の表象として描かれるようになった。
第17段落
・「謎」「不気味」:第16段落「不安定」「コントロール不可能」の言い換えである。
・「いっぽう」:対比構造を示す。 「謎」「不気味」⇔「未知の可能性を秘めた神秘的なもの」
第18段落:「妖怪観の変容」がこの文章の主題であったことを再度示している。
漢字の問題です。
(ア)民俗⇒①所属②海賊③良俗④継続
(イ)喚起⇒①召喚②返還③栄冠④交換
(ウ)援用⇒①沿線②救援③順延④円熟
(エ)隔てる⇒①威嚇②拡充③隔絶④地殻
(オ)投影⇒①投合②統治③系統④奮闘
となります。
・民間伝承としての妖怪=そうした存在
⇒指示語は具体化する
⇒①日常的理解を超えた不可思議な現象に意味を与えようとして生まれた存在
②人間が秩序ある意味世界のなかで生きていくうえでの必要性から生み出された存在
③切実なリアリティをともなう存在
選択肢①:「理解を超えた」「不可思議な現象に意味を与え」⇒正解。
第7段落のキーワード「事物のあいだになんらかの関係性をうち立てる」「秩序を認識」「枠組み」「時代とともに変容」「時間を隔てると変貌」
選択肢2「事物のあいだにある秩序を認識」「知の枠組み」「時代とともに変容」⇒○
選択肢3「要素ごとに」⇒×
「事物のあいだの関係性」(つながり)⇔「事物を要素ごとに分類」(バラバラ)
・中世と近世における妖怪観の変化を読み取る。
(中世)「記号」「所与」「リアリティ」⇔(近世)「表象」「人間が作り出す」「フィクショナル」「娯楽」
選択肢2:「記号」「人間が作り出す」「架空の存在(フィクショナル)」「楽しむ(娯楽)」⇒○
(ⅰ)
空欄Ⅰ(第2・第3段落)
選択肢①②:「娯楽の対象」⇒第1・第5段落⇒×
選択肢③:「娯楽の対象となった妖怪の説明」⇒記述なし⇒×
選択肢④:「歴史性」⇒第2段落
空欄Ⅱ(第4・第5段落)
選択肢①:「意味論的な危機」⇒第3・第4段落⇒×
選択肢②:「妖怪娯楽の具体的事例」⇒記述なし⇒×
選択肢③④:「歴史的背景」「妖怪認識の変容」⇒○
以上より、選択肢④が正解。
(ⅱ)
空欄Ⅲ(近世の妖怪観)=第12~第14段落(ノート1からそう判断できる)
選択肢③:「視覚的なキャラクター」⇒○
選択肢④:「人を化かす」⇒×
空欄Ⅳ(近代の妖怪観)=第15~第17段落(ノート1からそう判断できる)
選択肢④:「不可解な内面」⇒○ (第16段落「不安定」「コントロール不可能」)
(ⅲ)
空欄V
こうした自己意識=「不安定」「コントロール不可能」「謎」「不気味」
選択肢②:「自分自身を統御できない(コントロール不可能)」「不安定」⇒○
選択肢④:「分身にコントロールされる」⇒× (「誰かにコントロールされる」は書いていない。)
選択肢⑤:「他人にうわさされる」⇒× (うわさではなく、他人に直接言われている)
以上が共通テスト2021第1問・現代文(評論文)の解説です。
学習の一助となれば幸いです。